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3-2-6科学的社会主義の思想を欠落させた「共産党」六中総決議
「共産党」六中総決議の意義
★2025年9月3~4日開催された「共産党」の第6回中央委員会総会の決議は科学的社会主義の思想を学ぶ上での最高の〝反面教師〟的な教材といえるものです。このままでは、「共産党」は益々没落し、日本国民はマスコミと諸政党のフェイクによって暗中模索を強いられ続ける以外に道はありません。「共産党」六中総決議を科学的社会主義の思想を学ぶための教材の一つとして、なぜ「共産党」が益々没落せざるを得ないのか、国民はなぜ暗中模索を余儀なくさせられているのか、科学的社会主義の思想に則って「共産党」の6中総決議を読み、科学的社会主義の思想が示す日本復興の道について、みなさんと一緒に、考えていきたいと思います。
このページは、科学的社会主義の思想など無縁だった人、科学的社会主義の思想を忘れてしまった人たちに、是非、読んで頂きたいと思います。もちろん、自分は科学的社会主義の思想の持ち主だと思い込んで、資本主義社会での「分配」のみのために「政府・自民党」のみとたたかっているのでは思われる人も、是非、お読み下さい。
科学的社会主義の思想の役割
★科学的社会主義の思想の役割は、「資本の内在的法則」が「資本」の「競争」を通じて「資本主義的生産様式の社会」でどのように現れるのかを、〝唯物史観〟と〝弁証法〟を解明の武器として検証し、社会発展の新旧の要因と契機を明らかにし、労働者階級に自身の行動の条件と自身の本性とを自覚させることです。
☆そして、〝唯物史観〟とは、ごく簡単に言うと、エンゲルスが『資本論』第3巻の序文で、「マルクスによって1845年になされた『どこでもいつでも政治的な状態や事件はそれに対応する経済状態によって説明される』という発見」と述べているとおり、「いかなる歴史的時期においても、経済的生産と交換の支配的な様式、およびそれから必然的に生れる社会組織が土台をなし、その時期の政治的並びに知的歴史はこの土台のうえに築かれ、この土台からのみ説明される」(エンゲルス『共産党宣言』(1888年英語版への序文)岩波文庫、大内兵衛・向坂逸郎訳)という、マルクスが人類史上初めて明確にした科学的な歴史と社会の捉え方です。
★ここで大事なのは、資本主義的生産様式の推進者(エンジン)は「資本」であり、「政治」は資本主義社会の上部構造として資本主義的生産様式が円滑に機能し運営されるように資本主義を支える存在である、と言うことです。だから、現在の「共産党」のように、悪の根源が自民党の新自由政策にあり、「『失われた30年』は自然現象ではない。財界・大企業の利益のための『コストカット』を応援し続けてきた自民党政治によってもたらされたものである」(「日本共産党第29回大会決議」の「第7節」)などと「失われた30年」の原因を自民党による財界の「コストカット」の応援に矮小化することは、根本的に間違っています。
「失われた30年」は誰がもたらしたのか
★それでは、「失われた30年」はなぜ生まれたのか。
「失われた30年」は、「共産党」が言うような自民党による財界の「コストカット」の応援の結果でもなければ、経団連のビジョン「FD2040」(2025年5月発行の書籍版から)が求めているような「円滑な労働移動」等を労働者が拒んだ結果、日本全体の生産性が低下したので「約30年にわたり停滞が長期化」したのでもありません。
★「失われた30年」は、ホームページ1-4「70年代の始め以降に財界がすすめた政策」で見てきたように、経団連がビジョン「FD2040」で建前とする「貿易・投資立国」とは真逆な〝海外への投資と雇用拡大・国内産業の縮小亡国〟という経団連傘下の「資本」(企業)の行動──それは、「経済のグローバル化」を推進して富と雇用を海外に輸出することにより、中国などの安い労働力を使ってより少ない投資でより多くの儲けを得ようという、企業の儲けの重心を海外での活動に移行させるとともに国内投資を抑制するという新たな道の選択──によってもたらされたものです。
★経団連は、「資本」(企業)が国と国民を捨てた理由を、企業を擁護して、「FD2040」(書籍)で、厚顔にも、次のように述べています。
〈これまでの日本経済低迷の要因の一つは、国内設備投資の低迷とされる。GDP統計の民間企業設備投資の名目額は、1991年度に102.7兆円でピークを打ち、その後は長らく低迷を続けた。…(略)…
この背景として、国内市場の成長力の乏しさがあり、企業は成長力の高い海外に活路を見出さざるを得なかったと考えられる。実際、日本銀行の資金循環統計では、民間非金融法人企業の対外対外直接投資残高が、1995年度末の13.3兆円から2023年度末の233.1兆円へと17.5倍も拡大している。〉(P16-17)
☆国と国民を豊かにすることなど眼中になく、一円でも多く儲けを得ること以外に能のない資本主義的生産様式のもとでの私「企業」は、規制によって公的な性格を持たせなければ、「経済のグローバル化」の時代には、金持ちの利益になっても、国と国民に害を及ぼす存在に転化する以外に、進むべき道はありません。
脇道にそれた、しかし大切な、若干のオマケ
★なお、上記の経団連の主張と瓜二つのことを述べて経団連を泣いて喜ばせた人物がいますので、紹介します。
その人は、「なぜ空洞化するのかというと、日本の国内の需要が冷えているからですよ。だから外に出て行っちゃう。だから国内の需要──内需をよくする対策をやることが、空洞化対策にもつながると思っています。」(2017年10月16日のBS日テレの深層NEWSでの日本共産党の志位和夫委員長の発言)とマルクス・エンゲルス・レーニンが聞いたらビックリするような「産業の空洞化」の理由と「産業の空洞化」の基では「絵に書いた餅」に等しい解決策を示します。2016年の米国大統領選挙でのサンダース氏の資本の海外移転を抑制する法制定の主張*を煎じて飲ませたいくらいです。
☆この人は今、不破さんの茶坊主とも思われる山口富男氏に「赤本」やら「青本」やらを作らせて、『資本論』の「講演」なるものを行い、『赤旗』はその大宣伝をしています。『資本論』の「講演」をするなら、『資本論』第三篇「第一五章」の「資本が外国に送られるとすれば、それは、資本が国内では絶対に使えないからではない。それは、資本が外国ではより高い利潤率で使えるからである。」(大月版④P321)という文章くらい読んで、しっかりかみしめ、これまでの非を認めたらどうだろう。
★なお、この人の「講演」は、眉につばをつけて聞いたほうが良いと思う。なにしろこの人は、以前、「共産党」の初級教室で、「過渡期論」について疑問を持ちながらも(平気で?!)、講義をしたとの告白を『赤旗』でしていましたから。科学的社会主義の思想の持ち主としての矜持も誠実さも、この人は、持ち合わせていないのかもしれません。
*民主的社会主義者のバーニー・サンダース氏は2016年の米国大統領選挙の予備選で、「労働者が雇用を失う一方で企業の利潤が拡大するような通商政策を実施したりすべきではない」といい、「雇用を海外に移出し、利益を上げるのではなく、米国内で努力し、投資し、成長するような」企業活動が米国にとって不可欠であることを主張しました。
日本経済と日本社会はどのように発展してきたのか
★それでは、本題に戻って、「失われた30年」はどのように形成されてきたのか、みなさんと一緒に見ていきたいと思います。
☆商品とその代金だけが国と国との間を行き交う、いわゆる、「経済の国際化」の時期には、国内で生産した製品を海外へ輸出するという〝輸出中心の一本足打法〟により資本は大きな利益を得て、国内の設備投資と雇用を増やし、国内経済を拡大・発展させ、労働者階級もその利益のおこぼれの一部を享受することができ、「一億総中流時代」とも「資本主義の黄金時代」とも言われる一時期が出現させることができました。この時期には、労働者は、ウラーと叫ぶように、「賃金を上げろ」と言って闘うだけで、一定の生活改善を図ることができました。
★しかし、「資本」と供給チェーンが世界中に分散し絡み合う「経済のグローバル化」が進展するなかで、1995年以降、日本の「産業の空洞化」の影響がはっきりと姿を現しはじめます。
☆95年には、富の流出・雇用の流出・市場の収縮・社会の収縮という「産業の空洞化」の影響が誰の目にも明らかになり、1995年以降、国内の設備投資は低迷し、GDPは伸びず、雇用需給が変化して資本に有利になり、労使の力関係が変わり、輸出拡大を口実に賃金は抑制され、現在に至るまで労働者の賃金は横ばいで、戦後最長の好景気の時にも、資本主義的生産様式が本来持っているはずの「好景気」の時の労働者の「いっときの生活改善」という「資本」の利益のおこぼれの享受すら受けることが出来なくなり、非正規雇用は激増し、長く続く国民生活の低迷と国の社会保障基盤の掘り崩しが本格的に始まります。
★富の源泉である、労働者の勤勉によって高い生産性を獲得した日本の製造業が海外に出て行った結果、国内では労働集約的であるがゆえに生産性が低く賃金の低いサービス業の比重が増し、国内に残された企業は、GDPが伸びないなかで、「一円でも多く利益をあげる」という「資本の唯一無二の行動原則」にもとづいて、一円でも多く利益をあげるためのコストカットに励み、低賃金と低価格商品による経済の一層の弱体化が促進され、経済の低成長と低賃金が長期にわたって続くこととなり、加えて、企業は相次ぐ品質不正の体質まで身につけることとなります。
☆これらの結果、年金・福祉・医療の基礎は掘り崩され、社会的分業の恩恵を受けることを前提に暮らしが成り立っている労働者階級の暮らしはますます厳しさを増し、結婚・出産・育児・教育という〝人間の再生産〟そのものが制約され、社会全体が脆弱なものになってしまいました。
★なお、『赤旗』や『前衛』にも登場したことのある故大瀧雅之東大教授も、岩波新書『平成不況の本質』で、「有効需要の不足は、国内投資が対外直接投資に呆れるほどの速度で代替されているからである」と述べ、「産業の空洞化が著しく進んだ時期」、「日本は失業と利潤を輸入し、雇用機会と資本を輸出していたわけである」と言い、〝産業の空洞化〟により国内設備投資が減り労働需給が資本優位になったことが労働条件の悪化をもたらしたことを指摘していまが、不破さんと志位さんに牛耳られている「共産党」は〝東風馬耳〟を貫き通しています。
★この時、企業は、日本国民と日本経済のことを考えているならば、企業が社会的な存在としてその役割を果たそうとするならば、企業は、海外に富と雇用を流出させて少しでもより多く儲けようなどと考えるのではなく、より生産性の高い設備を国内に積極的に導入し、技術革新のための人財の育成と血の滲むような努力をすることこそが必要でした。しかし、経団連傘下の企業群が行ったことは、古い設備の更新程度の設備投資と正規雇用から非正規雇用への「雇用政策のパラダイム転換」、そして、労働分配率を引き下げることでしかありませんでした。これでは日本の経済が縮小し、いわゆる「一億総中流時代」が終焉するのも当然です。その主たる責任は経団連にあります。
グローバル資本とのたたかいが万国の労働者を団結させ未来を拓く
☆「資本」のあらゆる行動は、科学的社会主義が「瞳のように大切にする」〝万国の労働者よ、団結せよ!〟という言葉を、意味あるものにします。
★世界に災いを振りまいているのは、グローバル資本とその行動をサポートしている資本主義国家群です。グローバル資本は一層の資本蓄積を求めて母国の労働者を捨て、産業の空洞化を進めることでその国の労資の力関係を資本優位にして労働者に低賃金を押しつけ、同時に、進出先の資本主義の発展が遅れた国ぐににおいては、労働者を低賃金で搾取し、知財権なる私的財産権を押しつけて収奪します。海外での搾取を円滑に進めるために、グローバル資本は、資本主義の発展が遅れた国ぐにに対し、かれらの母国の経済的優位性、軍事的優位性を武器に彼らに有利な条件を「国際ルール」として押し付けます。
☆このような経済状態とそれに対応する政治的な状態があるからこそ、先進資本主義国の労働者も資本主義の発展が遅れた国ぐにの労働者も、団結して闘わなければならないし、団結して闘うための条件が生まれます。
グローバル資本とのたたかいが万国の労働者を団結させ、グローバル資本との万国の労働者の団結たたかいが未来を拓くのです。
☆しかし、現在の「共産党」には、金権・フェイク・ゲリマンダーで武装されたエセ「民主主義」の発達したG7諸国に対し、経済成長が期待される新興諸国を「資本主義の発展が遅れた」歴史の進歩への「歴史的制約」がある劣後の国とみなし、「2020年綱領」は第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」「第一七節」(新「第一八節」)からこれらの国ぐににおける人民のたたかいを削除し、「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」などと明記し(*)、世界の労働者階級の団結の意義を捨て去り、グローバル資本との万国の労働者の団結したたたかいの意義など歯牙にもかけない態度です。見て見ぬふりをしているのか、それとも見えないのか、情けない、としか言いようがありません。
(*)詳しくは、ホームページ3-2-2「『2020年綱領』を克服して、共産党よ元気をとりもどせ!!」のPDF(P13)を、是非、参照して下さ。
敵を見失って、我が道を行く「共産党」
★「共産党」は6中総決議で「財界中心・対米従属という自民党政治の『二つのゆがみ』の転換を求める」ことを大方針として、現在の状況を「国民の利益にかなう方向で打開する出口は、自民党政治そのものを終わらせること以外にない。わが党はそのたたかいの先頭に立つ」と言い、先の参議院選挙において「党の『メイン』の訴え」として「消費税、賃上げ、社会保障、大軍拡と平和などの訴え」たことをのを述べています。そして、「すべての支部」にたいし、「消費税、教育、子育て、住まい、コメと農業、ジェンダー、平和、気候危機から、地域の身近な要求まで、草の根で語り合い、国民の苦難軽減の立党の精神に立って、要求実現のとりくみをすすめよう」と訴えています。
☆しかし、ここで言われている、「自民党政治の『二つのゆがみ』」に基づく「国民の苦難」とは、直接又は間接に、日本に〝産業の空洞化〟をもたらして経済を弱体化させ、国民から元気を奪った「資本」(財界=経団連)の経済活動を円滑に推進させるために、スポンサーである財界(「資本」)のために自民党が推進したり、後ろ向きであり続けている事柄です。資本主義的生産様式の社会を動かす推進力の「資本」こそが人民の敵であり、資本主義的生産様式の社会の変革こそが科学的社会主義の党の「立党の精神」なのに、「資本」の行動を暴露し現在の日本が抱える困難の根本的な解決の道を示さず、「共産党」は敵を見失って、他の与野党も口先だけでは主張するような国民の苦難軽減だけを「立党の精神」にしています。
★マルクスもあらゆる機会に、「もろもろの結果とたたかいはしているが、それらの結果の原因とたたかっているのではない」だけのたたかいは「必ず失敗(敗北)する」(*)ことを述べていますが、これでは、財界人は枕を高くして寝むり、国民にはストレスがたまる一方です。
☆〝失われた30年〟間の経済停滞と年金・福祉・医療など国民の生活基盤の掘り崩し、そして、その結果としての現在の〝政治の混迷と多極化〟をもたらした責任の一端は、「資本」の行動を暴露し現在の日本が抱える困難の根本的な解決の道を示すことのできる科学的社会主義の党が、残念ながら、存在しないことにあります。
(*)詳しくは、ホームページ4-1「☆不破さんは、『賃金、価格、利潤』の賃金論を「「ルールある経済社会」へ道を開いてゆく」闘いに解消し、『賃金、価格、利潤』を労働運動にとって何の意味もないガラクタの一つに変えてしまった。」等を、是非、参照して下さい。
参院選が示した〝失われた30年〟の国民の審判
★2025年7月に行われた参議院選挙は、「失われた30年」の本質が隠蔽され、ムードに依拠したたたかいが繰り広げられる中で、自・公、立憲、維新、共産という既成政党が票を失い、〝失われた30年〟で元気を奪われ、ストレスが溜まりにたっまった国民の少なくない人たちが、税収を国民に還元して「手取りを増やす夏。」を実現させるという企業にとってフレンドリーで労働者の「資本」とたたかう意欲を起こさせないみみっちい実利を訴えた国民民主と「日本人ファースト」を掲げて「これ以上、日本を壊すな!」と訴えて古き良き時代を羨望する参政に票を投じることによって、危うさを内包した〝多党化の時代〟、危ういカオスに満ちた日本が幕を開けようとしています。
☆自・公、立憲、維新、共産という既成政党が票を失ったのは、〝失われた30年〟の間、その克服のための、国民が納得するような、有効な道を提起せず、「産業の空洞化」がもたらした経済停滞と国民の生活基盤の脆弱化を許し続けたことに多くの国民が業を煮やしたた結果です。そして、そうであるならば、このことは、これらの既成政党への国民の支持は、これからも減少し続ける蓋然性が高いということです。
★資本主義的生産様式の矛盾が国民に明らかになればなるほど自・公や維新の主張のペテンが暴露され国民の共感が減少し続けるというのがあるべき歴史の正常な流れですが、資本主義的生産様式の矛盾が暴かれず、自・公や維新、参政、国民民主や立憲の一部など資本主義の推進勢力のペテンに満ちた主張が世の中を闊歩し続けるならば、国民は危ういカオスの海に飲み込まれ、日本は希望を失ってしまいます。
「共産党」はなぜ、こんな不甲斐ない、政党になってしまったのか
★本来、資本主義的生産様式の矛盾を国民に明らかにする科学的社会主義の思想の持ち主と思われていた「共産党」が、なぜ、その任務を放棄し、このように力を失うことになったのか。
☆その原因は、不破さんが21世紀になって大「発見」したという──不破さんが自らの思想にマルクスを合わせるために、マルクスが1865年にエセ「科学的社会主義」の「資本主義観」と「革命観」に転落したという不破さんの創作である──マルクスの「資本主義観」と「革命観」の大転換なるフィクションにあります。
不破さんは、不破版エセ『資本論』である「新版『資本論』」の『赤旗』の宣伝ページで、現在の『資本論』の編集上の「一番大きな問題点は、エンゲルスが恐慌論におけるマルクスの到達点を見落としたことです」と述べて、不破版エセ『資本論』を刊行する動機として、マルクスの思想をエンゲルスが共有していなかった点を上げています。問題の核心はこの点にあります。資本主義的生産様式の社会を発展し続ける社会と見るのか、それとも矛盾を深め、新しい生産様式の社会に変わるべき宿命をもった社会と見るのか、この点にあります。
★不破さんが「発見」したというマルクスの「恐慌論」の到達点とは、一体どのようなものなのか。それは、一言でいうと、〝「恐慌」は資本主義の新しい発展の出発点に過ぎず、資本主義社会は発展し続ける〟(*1)という〝資本主義発展論〟とでもいうべきものです。
この誤った認識を根拠として不破さんが「共産党」に押しつけた「多数者革命論」というもっともらしい「タイトル」の「革命論」は、資本主義は発展し続けるのだから、ねばりづよく資本主義の改良を積み重ねていくことこそが必要であり、一つ一つ生活防衛のバリケードを築く闘いを続け、その過程で「共産党」が国民多数の支持を得て議会で多数派となり、「革命」を成就させるというものです。その結果、変革すべき対象が「資本主義的生産様式」から「政治」にすり替えられて、政治こそが変革の対象となり、敵は「政党」であり、たたかいの舞台は「議会」のみとなります。
★こんにちの「共産党」は、不破さんのこのエセ「科学的社会主義」論、エセ「革命」論に汚染されてしまいました。この「思想」は、「資本」の行動によって〝矛盾〟が蓄積することなど眼中になく、「資本」は常に前に前に進むだけですから、前に見たように、志位和夫委員長の「産業の空洞化」についてのビックリするような発言さえ飛び出すのです。
そして、マルクスの〝人民革命〟の思想は否定され、不破さんの「多数者革命論」によって「革命」が「議会」で「共産党」が多数派になることに矮小化されたために、将来の〝企業〟統治の主体であり、新しい生産様式の社会の中心的な担い手である〝労働者階級〟の歴史的使命は、2004年の改悪で、党の「綱領」から消し去られてしまいました。(*2)これが、「共産党」が現在のように科学的社会主義の思想からそれてしまった理由です。
青山は、このようなエセ「科学的社会主義」が克服され〝日本共産党〟が、再び、蘇ることを心から願っています。
(*1)詳しくは、ホームページ4-19「☆不破さんは、マルクスが1865年に革命観・資本主義観の大転換をしたという、レーニンも気づかなかった大発見を、21世紀になっておこない、マルクスの経済学をだいなしにしてしまった。」等を、是非、参照して下さい。
(*2)詳しくは、ホームページ3-2-1「『2004年綱領』にみる不破哲三氏の転落の証明」及びホームページ3-1-1「不破さんと志位さんの『共産党100年』史…科学的社会主義の大地に『資本主義発展論』の種を蒔く」等を、是非、参照して下さい。
現実無視の「綱領第三章第九節」の弊害
★不破さんの弟子の志位さんは、不破さんの強い影響のもと、「日本共産党第28回大会」(2020年)で「綱領第三章」に「第九節」を設けて、「一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代した」と明記し、その理由として、「綱領第三章第九節」の提案報告で、「一握りの大国が世界政治を思いのまま動かしていた時代」が終わったことを述べています。
☆青山は、ホームページ3-2-2「『2020年綱領』を克服して、共産党よ元気をとりもどせ!!」で、その誤りを指摘し、「この現実を見ず、『一握りの大国が世界政治を思いのまま動かしていた時代は終わり』などと呑気なことをいって、願望で現実を塗り替えたら帝国主義者の思うつぼです。」と述べ、警鐘を鳴らしましたが、この「綱領第三章第九節」における、米国の覇権維持の野望と米国が相変わらず覇権国家として振る舞っている今日の世界の現実を見ない、世界情勢についての誤った見方が、いま世界の大半の国々が米国にひれ伏すことによって、世界経済を大混乱に陥らせているトランプ関税に対する「共産党」の認識と対応を根本的に誤らせています。
★「トランプ関税」の目的は、米国が世界の覇権国家として無理矢理「資本」と「雇用」を米国に移転させることにより、「経済のグローバル化」による「産業の空洞化」を克服して中間層を復活させ、「同盟国」という名の子分たちをより一層従属させて、アメリカを再び偉大な国にする(MAGA)ことです。
☆たび重なる「綱領」改悪で、科学的社会主義の視点を失った「共産党」は、『赤旗』(2025/09/13)によれば、9月12日の参院予算委員会での日米関税合意に関する集中審議で、大門議員が「国民負担を生じないよう慎重に考えなければならない問題だ」と主張し、「法に照らして厳しく審査し、米国に言うべきことを言うよう求め」、対米80兆円投資の「危険性を指摘しました」と、その視野の狭さを明らかにしています。
★「トランプ関税」の問題は、日本政府が融資の焦げ付きを作ったら困るなどという次元の低い問題ではありません。米国に技術や知財権を集中させ、米国の「同盟国」を含む世界中の人民への米国による搾取を強化されるという重大問題であり、世界の人民の団結を促すべき問題であり、「資本」と「雇用」の米国への移転により日本の「産業の空洞化」が一層進むことによって、日本経済と国民生活の地盤沈下が一層深刻になるということです。それだけではありません。対米80兆円投資の保証を外貨準備金で行うことになれば、外貨準備金の「外貨準備金」としての意味・機能がなくなり、投機的な円安を防ぐことができず、円の暴落を誘発させる危険があります。こうなったら、日本経済は真っ暗です。
☆「共産党」は科学的社会主義の思想を放棄し、米国の世界の覇権国家としての意味を全く理解していないから、このような〝本当の的〟を外した、世間受けするだけの、「健全で「単純な」(!)常識の騎士たちの観点」(大月版『資本論』第2巻P505~506(原書409~410)参照)に立った、みみっちい話をするのです。
資本主義的生産様式からの脱却以外に、日本の進むべき道はない
★日本には、今、解決すべき大きな課題が三つあります。一つは、①現在の経済的困難にともなう国と国民の疲弊・衰退の問題であり、二つ目は、②深刻化する気候変動・生態系崩壊と企業のありかたの問題であり、三つ目は、③高度な情報技術の発達を活用する社会と企業のありかたの問題です。
詳しくは、①についてはホームページ1-4-2 〈 2024年「経団連」ビジョン「FD2040」の告白とウソとタブー〉(その1)を、②と③についてはホームページ1-4-3〈 2024年「経団連」ビジョン「FD2040」の告白とウソとタブー〉(その2)を、是非、参照して下さい。
★希望に満ちた日本の未来を展望する党は、この三つの課題を解決することこそが日本の未来にとって不可欠であることに確信をもって、その解決が日本の当面する最重要の課題であることを国民に訴え、これらの課題を解決するためには、利潤のみを求めて個々バラバラに活動する私「企業」によって経済が発展させられる仕組みである資本主義的生産様式から、労働者階級を中心とする国民が運営し、国民の意思が反映される、〝おおやけの企業〟の有機な結合によって経済が司られる新しい生産の仕組みに、社会のあり方を変える以外に道はないことを多くの国民が確信することです。この国民の確信の広がりこそが、科学的社会主義の党のエネルギー源です。
★現在、日本共産党は存亡の危機にあります。
『赤旗』(2025/08/25)によれば、「資本主義は(資産を)所有する階級によって、自らの利益を求めて自分たち以外を搾取するために設計された制度だ」という正しい認識をもっている「米国民主的社会主義者」(DSA)は、「1982年の設立以降、会員は6000人前後で推移してきました。2012年時点ではDSAを設立した世代が60代に差し掛かり、「集まりでは25~60歳の会員が非常に少ないことがしばしばあった」といいます。なにやら現在の「共産党」のようです。
しかし、「2010年代前半に学生ローン問題、人種的正義、教育格差、中絶・ジェンダーの問題などで草の根の運動と連帯を強化」し、2016年の民主党予備選で「民主的社会主義」者を堂々と名乗って「産業の空洞化」を暴露する主張を展開した(「脇道にそれた、若干のオマケ」の節で紹介した)バーニー・サンダース氏を支援することを最優先課題に据えてたたかい、その中で「停滞していた組織が大きく変わり始める」こととなり、現在、「DSAは全米に地域支部などを持ち、会員は8万人以上です。現会員の97%は2016年以降に入会しました。」(DSA提供)とのことです。
★「共産党」も、もう一度、科学的社会主義の道に立ち返ることができるならば、米国のDSAに勝るとも劣らない大躍進を図ることができるでしょう。老兵だって、まだ闘う力は持っています。
科学的社会主義の目指す社会とその作り方
科学的社会主義の目指す社会
★資本主義的生産様式の社会は、「資本」の持ち主に「企業」の支配権を与え、私「企業」(「資本」)が大きくなることによって経済が拡大し、社会が発展する仕組みの生産の仕方の社会です。
科学的社会主義の目指す社会は、この生産の仕方を廃止して、①民主主義が政治の分野だけでなく、企業の統治にも拡大され、企業を支配するところの「資本」という概念は消え去り、企業はその企業の労働者を含む国民によって民主的に運営される、②企業の成長のための資金は労働者の搾取によって調達するのではなく、これまで搾取され富裕層のもとにある財や年金積立金等で手当てし、企業は成長の果実から減価償却費として年金積立金等に償還する、③政治の分野における金権、フェイク及び不公平を排除し、「政党助成金」制度を抜本的に改善し、政治への国民の直接的な関与の条件を拡大する、④行政への国民の関与を飛躍的に拡大させる、⑤他国民を搾取せず、世界の人民・労働者階級が等しく幸福を享受することのできる社会の実現のために、全世界の人民・労働者階級の団結を促進する、ことを実現する社会です。
科学的社会主義の目指す社会の作り方
★資本主義に変わる新しい生産のしかたの社会をつくるためには、その必要性とその実現方法を明らかにしその実現の先頭に立つオピニオンリーダーが必要であり、その資格を持つのは新しい生産様式の社会への、単なる願望ではない、科学的な展望を示すことのできる人たちの集団(党)であり、その思想は〝科学的社会主義〟と呼ばれています。
★日本には「科学的社会主義の党」を標榜する政党として、過去に輝かしい歴史を持つ、「共産党」がありますが、しかし、これまで見てきたように、現在は、残念ながら、「科学的社会主義の党」とは名ばかりで、その改善の見込みはありません。その理由は、党員の声が「支部」という蛸壺のなかに閉じ込められ、意見の交流の機会がなく、実質的に、「指導部」が決めた方針がつらぬかれ、少数意見の多数派への転化の道が閉ざされるという仕組みになっているからです。この改善こそ、絶対必要で、急務です。(*1)
★そして、現在の「共産党」には、もう一つ致命的な欠陥があります。それは、不破さんが──マルクスは1865年に革命観と資本主義観の大転換をしたと言ってマルクスの〝人民革命の思想〟を否定して──編み出した、「共産党」が議会で多数派になることによって「革命」が成就されるという「多数者革命論」なるインチキ「革命論」に基づく運動の進め方です。
☆日本共産党が健全で元気だったころ、青山の目に映った共産党は、労働者階級を中心とする〝民族民主統一戦線〟が権力を握って〝人民革命〟を推進するという方針のもと、民族民主統一戦線の萌芽の小さな一つとしての〝安保破棄諸要求実現委員会〟を全国につくることに努力し、国政選挙においても〝革新共同〟の候補者の当選に力を尽くし、国会では「共産党・革新共同議員団」としてたたかう姿でした。
☆マルクスの言う〝結合労働に基礎をおく新しい生産様式の社会〟は、〝人民革命〟なくして実現できません。科学的社会主義の党は、〝人民革命〟による国のすべての分野での民主主義の実現のための〝助産師〟としての役割を担っていますが、それ以上でもそれ以下でもありません。(*2)
☆だから、政治の舞台においても労働者階級を中心とする国民こそが主人公でなければならず、「共産党」の当選のために国民が「共産党」を「後援」するなどということは本末転倒であり、「市民と野党の共闘」という虚構のもとでの国政選挙における野党間の候補者調整など「自民党政治を変える統一戦線」とは全く無縁のものです。2025年7月の参院選に敗れた「共産党」は「〝反動ブロック〟の危険に立ち向かう〝新しい国民的・民主的共同〟」を呼びかけていますが、「国民的・民主的共同」と銘打って、これまで同様に、一時的な「野党の共闘」だけができたのでは、〝人民革命〟を展望した運動とは言えません。
新しい社会をつくる〝助産師〟として「共産党」がやるべきことは、「革新懇」を〝自民党政治を変える統一戦線〟の萌芽となるような開かれた民主的な組織に改編するとともに、「党創立103周年記念講演会」へ「ビデオメッセージ」を寄せられた前川喜平さんたちや『赤旗』に平和のメッセージを寄せられた田中優子さんたちのような人たちが参加でき、そこから多様な能力と多様な活動をしている方々が国政の場にも参加できるような〝国民的な共同〟の組織を発展させるために、坂本龍馬の如く、かつ、縁の下の力持ちとして尽くすことです。(*3)
(*1)詳しくは、ホームページ3-3-3「民主主義を貫く党運営と闊達な議論の場の設定を」を、是非、参照して下さい。
(*2)詳しくは、ホームページ3-3-1「〝前衛党〟は市民革命の助産師に徹しよう…科学的社会主義の党が輝くとき」を、是非、参照して下さい。
(*3)詳しくは、ホームページ3-2-5「“科学的社会主義の思想”とは何か…『日本共産党第29回大会決議』を検証する…共産党よ元気をとりもどせ。蘇れ!Communist Party。」及びホームページ3-3-4A「科学的社会主義の党の選挙闘争について」を、是非、参照して下さい。
重要なオマケ
★青山は、10年近く前に書いた、ホームページ3-3-2「党支部は、党を作り、草の根から民主主義を組織するよりどころ」で次のように指摘しました。
「昔、〝共産党〟のお家芸だった、紙の爆弾といわれた『赤旗』号外の全戸配布など、影を潜めてしまいました。
労働者・国民一人ひとりに政治と経済の真実を知ってもらうためには、資本主義の矛盾をバクロし、新しい生産様式の社会の必然性と必要性を理解しもらうためのビラの全戸配布は欠かせません。
国政選挙のない時期にも、いや、国政選挙のない時期にこそ、四半期に一度程度のペースで、一種類のビラを3カ月かけて、年4回、年間を通じて系統的に、全戸配布ができるような体制を、早急に、全党に整備すべきです。そのために、㋐党中央はその時々の国民の関心事と政治的課題を正確につかみ㋑県・地区・市委員会の意識改革を行い、居住支部に属さない党員が積極的に地域で活動できるような体制を整える必要があります。いま頑張って、このような活動を行わなかったら、「党」は益々小さくなり、その機会は失われてしまいます。いまがラストチャンスなのです。党員も『赤旗』も減って財政が苦しいからビラが配布できないというのなら、わけの分からない理屈をつけて「政党助成金」の受け取りを拒否するという利敵行為を直ちに改め、「政党助成金」をしっかりもらって使えばいい。
「共産党」は、議会で「共産党」が増えることだけを目的とした活動を改め、〝by the people〟の思想を根本にすえて、伝える活動をベースにすべての活動を展開する必要があります。」
★「6中総決議」は、「①全有権者規模の大量宣伝」の評価として「マイ宣伝カー・マイ宣伝サイクルなどによる『声の宣伝』は、4中総が提起した『100世帯に1カ所』の宣伝を、全国的に公示日までにやりとげた。これは全党の大奮闘による重要なとりくみとなった。」と述べて〝自画自賛〟していますが、このような上滑りの自己満足の「宣伝活動」をしていてはだめです。
☆残念ながら、「共産党」にはもう、「党」が益々小さくなり、その機会が失われてしまったのでしょうか。「党」が考える今と未来について知っていただくためには、出来るところからでも、できる限り、ビラの系統的な全戸配布をおこなうは欠かすことのできない必須の活動です。本当の革命家は、困難なことを不可能と言わず、結束してその困難を打開することです。困難なことを不可能と言うのは、日和見主義者の常套句です。
※なお、「政党助成金」についての青山の考えは、ホームページ3-3-5「民主主義の発展にブレーキをかける「政党助成金」への対応」を、是非、参照して下さい。